8月18日(日)高校野球の実況は、誉めるのが基本』

夏の甲子園真っ盛りである。負ければ同じチームのメンバーと一緒に試合をすることはなくなる。まさに真剣勝負が心を打つ。NHKのアナウンサーになり、一番嬉しかったのが、甲子園の選抜大会と、夏の大会の実況中継で、今でも、もう一回甲子園で中継してみたいと思う位だ。

夏の暑さの中で、中継担当のアナウンサーは、肉体的な疲労と戦いながら実況する。資料を作り、暗誦することに時間がかかり、寝不足の中での実況も経験したし、それに猛烈な暑さが加わり、疲労はピークに達するが、ユンケルを飲みながら、高校球児に負けてはいけないと、エネルギーを燃やして中継したのである。

先輩スポーツアナウンサーとして、今年の甲子園の中継を見たり、聞いたりすると、一投一打にアナウンサーが興奮して中継しすぎかなと思う。プロ野球なら取っても当たり前のゴロを、好プレー、ファインプレーと叫ぶ場面によく遭遇したが、自分でも、そういう中継をしていていたので、苦笑するしかなかった。でも高校球児は、MLBもびっくりするようなファインプレーも、時折見せるので、仕方がないところである。

私は、基本的に、高校球児をなるべく誉める方向で中継したし、ミスは深追いせず、エラーした選手を責める事はしなかった。誉める限り、誰も傷つかない。貶されれば、本人の痛手となる。私は、甲子園に出場している選手、一人一人にとり、もしかしたら人生のピークになるかもしれないと考えて中継していた。だから、少しでもいいプレーがあれば、誉める事にしていた。先輩からは、これは、普通のプレーだろうと随分指摘されたし、桂一郎の中継にはファインプレーが多いな、と言われたが、私はそれでいいと思って中継していた。まだ高校生、少年のやっている野球だ、プロとは違う、と言う考えで、誉める実況してしまったが、今では、それで良かったと思っている。

鈴木桂一郎アナウンス事務所

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