12月8日(土)『国立劇場、増補双級巴(ぞうほふたつどもえ)‐石川五右衛門)
今月の国立劇場は、石川五右衛門を主人公にした歌舞伎である。今回は、石川五右衛門の家族の話が中心と言うのだが、大泥棒の大泥棒としての活躍はほとんど描かれず、かと言って家族への情愛も一通りで、いつか山があるかと期待して観ていたが、結局何も起こらず、山のないまま舞台は終わってしまった。大詰めに入り、これまでの事がすべて夢の中の話であったと言われても、波乱万丈の舞台ではないから、何が夢なのか良く分からなかった。五右衛門を、吉右衛門が演じなけらば、面白くもなんともない芝居だった。
興味の対象は、正直に言って、吉右衛門のつづら抜けだったので、見事に決まったので、良かった。もう一つ楽しみだったのが山門。木屋町の二階に見立てた山門、世話にくだけた吉右衛門がぴたりと背景に会い、極彩色に彩られた山門を頭の中に描くと、その違いが面白く、舞台背景が変われば、同じ役でも演じ方が変わる面白さを見せてくれた。この芝居は、これで良しとしよう。
それにしても70歳を超えての宙乗りは驚く。吉右衛門が元気よく務めたので、安心したが、でもファンの本音は、吉右衛門には、宙乗りとか、つづら抜けは期待していないのではないだろうか。吉右衛門はこの芝居出ずっぱりだった。最後には大立ち廻りもあり、吉右衛門は疲れ切っているように見えた。私は、吉右衛門に無駄に疲れさせないで欲しいと願う。無理しないで、本役で頑張って欲しいと思った。吉右衛門がつづら抜けに失敗して、落下でもしたら、歌舞伎界の大損失だ。
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