2017年7月9日(日)『七月歌舞伎座、春の部、矢の根、加賀鳶、連獅子』

 歌舞伎座の7月公演、昼の部を観に行く。

昼の部は、右團次の「矢の根」、七代團十郎がが歌舞伎十八番の一つに選定した、典型的な荒事である。筋と言う筋はない、絵姿を見る芝居である。黒鬢、筋隈、黒繻子揚羽織、仁王襷といういでたちは、一目で荒事と分かる姿で、誰でも、この衣装を身に付ければ、それなりに見えるのであろう。右團次の肉体は、亡くなった富十郎に似て、大きな顔、短足胴長の短躯が、こうした衣装に会い、丸い顔の童顔が、少年のように見えて、姿形は、見事な曽我五郎である。右團次の大きな顔に描かれた赤い筋隅が、少年の若さを強調していて、精気溌剌として、姿が決まっている。各所に散りばめた、ミエも、きっちりと決まり、最後に馬に乗り、花道を帰る所も、余裕を持ってこなし、右團次の荒事の姿形だけで、楽しめた芝居だった。右近時代から口跡の大変よい役者だったが、今日は、3階B席では、良く聞き取り辛い所もあった。どうしたのだろうか。右團次襲名で、海老蔵が座頭の七月歌舞伎で、主役を張れたのだから、良しとしよう。七月の歌舞伎座は長らく、猿之助の責任興行だっただけに、見る私には、複雑な思いもあった。

 二幕目は、加賀鳶である。この芝居も、加賀鳶の親分の梅吉の颯爽とした所と、悪党、按摩の道玄の二役を、海老蔵が、どう演じるか、と言うと所だけが、見どころの芝居である。二枚目の海老蔵が、梅吉をやれば、いいに決まっている。颯爽として、きっぱりとしていて、素敵な若親分と言うところだ。ただ年配の親分の貫禄は感じなかった。若い造りの、梅吉では、果たして、押しかけようと、殺気立つ、加賀鳶のメンツを止められるのだろうか、疑問も生まれる。貫禄、貫目は、これからであろう。すっきりとした二枚目は、浮世絵から抜け出てきたようで、声だけで、入場料を払った価値を感じた。一方の、悪党の道玄は、目をぎょろつかせ、時には、クルクルと回し、見せ場を作るが、按摩の悪党、金のためなら平気で殺人をする道玄には見えなかった。10年後に、もう一度、悪党道玄を見てみたい。

 三幕目は、連獅子、狂言師右近、親の獅子の精を海老蔵、左近、子の獅子を巳之助が演じた。綺麗な顔立ちの海老蔵が、鼻筋を白く塗り、ますます精悍な顔になって登場すると、海老蔵ファンは大喜び、巳之助のメイクも、綺麗で、三津五郎を思わせる横顔に、憂いも感じた。メイク次第で、巳之助も美しくなれるんだと驚いた。若さあふれる、海老蔵、巳乃助の獅子の首振で、元気をもらって帰宅した。

 海老蔵の大奮闘公演、奥様の死を乗り越えて、頑張って欲しい、海老蔵ファンの拍手が、いつもより大きかった。

鈴木桂一郎アナウンス事務所

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