2017年1月8日(日)『新橋演舞場1月公演、昼の部、雙生墨田川』

 新橋演舞場の1月興行は、市川右團次襲名披露興行である。昼の部は、雙生墨田川である。近松門左衛門の作で、三代目の猿之助で一度見たが、あまり記憶はない。

 けれん味たっぷりで、宙乗りあり、本水あり、の面白い芝居である。右團次の名跡は、海老蔵の家にあった名で、9年も前に、継がないかと声をかけられたそうだ。三代目猿之助の突然の病気で、澤瀉屋一門の分解が始まり、当初は、猿之助は、右近が継ぐものだと思っていたら、三代目の実の息子が中車と言う名跡を名乗って歌舞伎界に入り、その子が、四代目の猿之助が、継ぐ事になるという。もはや、右近は、澤瀉屋には、いらない存在になっていたのかもしれない。そんな右近に取り、三代目のケレンを受け継いでいくにあたり、ケレンで売ったという右團次の名前を継ぐのはいいことなのだろう。

 右團次は、声の質が高く、透き通り、大音量で、響かせることができる声は、まるで亡くなった富十郎を思わせ、富十郎亡きあとでは、歌舞伎界随一であろう。三代目猿之助のセリフ術は、すでに自分のものにしている。決めのきっぱりとした所、力強い所作、義太夫に乗った台詞術、体の動き、ミエの大きさが右団治の特色である。右近は、三代目のコピーと言われたが、四代目の亀次郎の猿之助は、襲名当初は、コピー風に感じたが、今や四代目独自の猿之助を演じるようになった。現在三代目の猿之助に極めて近い演じ方をするのが、右團次であろう。今後の活躍を、期待したい。

海老蔵、猿之助、先代の弟子、笑三郎、笑也、猿也が脇を固めた。

 猿之助、右團次、息子の右近の三人が、一緒に宙乗りをする見せ場もあり、大いに楽しめた。右團次の子供は、右近を襲名したが、声は小さいが、堂々と演技をしていて、かわいくてよい。