2016年11月23日『猿之助スーパー歌舞伎2、ワンピース』
これが歌舞伎なのかと、微妙な気持ちを持って帰路についた。簡単に言うと、宝塚+ディズニー+ミュージカルという感じかな。これまで見たことがない演劇で、次に何が繰り出されてくるのか、わくわくしたが、次から次へ、出し物が繰り出されるから、飽きないし、もちろん寝たりもしなかった。暇つぶしという見方で見るなら、舞台上が騒がしくも楽しくて、極上のエンターテインメントといえる、と思った。ただ歌舞伎という見方をすると、何が何だかわからないというのが正直な処だ。芝居がはねて、帰り道、着物を着た、歌舞伎ファンと思われる方たちと一緒に歩いたが、口々に、「これが歌舞伎なのかね、わからない」と話していた。まあ、名優の名演技とは、対極にあるのだろう、型はないし、三味線、義太夫もない。鳴り物もない。時折、節に乗ってセリフを言ったり、みえをきったりするが、あくまで、おまけである。まあ新たなエンターテインメントが始まったという事にしておこう。
猿之助が少年を演じる、演じきれる、圧倒的な若さに感動した。舞台から飛び出してくる、エネルギーがすごい。キャラクターがたくさん出すぎて、漫画の原作を読んだ事がないので、よく分からなかった。まあ、いいだろう、次回作に期待だ。
一年前に実際に見た時の劇評を改めて読んでみて、今回と同じように感じ入ったのは、猿之助が、少年ルフィーを演じ、去年は客席から、今回は、アップで写されても、舞台と同じように少年に見えた事だ。タダタダあきれるほどの若さの演技である。昭和50年11月26日生まれだから、今は、40歳をこえている猿之助が、少年を演じられる不思議さ,演じて少年に見せる秘密はどこにあるのかと、考えてしまった。言葉を発した時に、斜め上を見る事、常に頬をゆったりと見せる事、いろいろと演技上の工夫があると思うが、是非聞いてみたいものだ。先日、NHKのスタジオパークに出演した時に、早変りの時に、ただ変わるのではなく、少し襟を直したり、帯に手をかけてみる方が、早変りの実感を観客に知らせる事が出来る、と言っていたが、なにか、このあたり魔法の秘術がありそうだ。もちろん猿之助がいいのは、顔だけではない、声も、トーンを上げて少年の声になっている。動きも若く見せている。歩くときは弾むようだ。歌舞伎役者としての、いや役者としてのノウハウをフルに使って、まっしぐらに少年にチャレンジしている。もし私が少年だったら、ルフィーのような少年と、冒険をしたいと思うだろう。私は、65歳だが、そう思った。来年の秋に、再演が決まった。もう一度見に行くつもりだ。できるだけ、少年に見える格好をして。
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