2016年1月4日(月)『歌舞伎座夜の部、猩々、二条城の清正、吉田屋、雪暮夜入谷畔道』

 歌舞伎三連発の今日は、歌舞伎座の夜の部に行った。昨日は、浅草で、学芸会レベルの歌舞伎を見たので、今日は、玉三郎の吉田屋が楽しみである。

 夜の部は、最初が、猩々(しょうじょう)、長唄舞踊である。私は、踊りは詳しく知らないが、中国の揚子江の水の中に住む幻獣、猩々が、酒に酔って、ほろ酔い気分で、踊る舞が、可愛くて、心が和んだ。猩々は、橋之助と梅玉、足の運びが、なかなか面白い踊りだった。イヤホンガイドを聞いていると、頭を手で押さえて、空を見ると、月を見るふりというのが理解できた。酒売りが松緑。能から取った踊りだそうだ。

 二つ目は、二条城の清正、正月から、この芝居なのかと疑問だが、ストーリー展開に乏しい、セリフ劇だから、眠気を誘う。幸四郎が清正、秀頼が、幸四郎の孫、染五郎の息子の金太郎が務めた。金太郎は染五郎の子供らしく、鼻も高く、端正な顔立ちで、高貴な秀頼のニンにぴたりと合い、好演。椅子に座って清正の話を聞く姿、背筋を伸ばし、左肩を若干下げて、 指で、小さく円を描いて、座っている姿は、品があって、きりっとしていて、秀頼のイメージと重なり、将来が楽しみである。孫を相手に、幸四郎も、気持ちよく芝居をしているように思った。まあ、芝居、そのものは、新歌舞伎で、セリフ劇なので、特にストーリー展開が、あまりないので、眠気を誘う芝居ではあった。

 三つ目は、今日のお楽しみの、吉田屋。夕霧の玉三郎の美しさが見どころである。伊左衛門は雁治郎。花道から出てくる伊左衛門は、出からして、デブなので、編み笠を被り、紙子を着ていても、みすぼらしさはないし、色気は感じない。雁治郎は顔が綺麗ではないのだから、少なくても、体重をコントロールして、痩せないと、色気も何もない。体を柔らかく、くねくねしても、色気は出ない。舞台に立ち、夕霧に会いたいが、なかなか出てこないので、いらいらしている姿、嫉妬している姿を延々と演じるのだが、色男ならそんなものかと思うが、デブ男が、絶世の美女夕霧に、色模様は、現実的にイメージできないので、舞台上の演技が、嘘っぽくて、軽九見える。上方和事のやすしも何もない。嘘の世界に入っていけないのだ。玉三郎の夕霧が可愛そうになった。これでは、二人は、相思相愛で、子供が一人生まれているという現実も、窺がえない。デブのままで、鴈治郎は、歌舞伎の世界で、今後どう生きていくのであろうか。

 四つ目は染五郎が直次郎を演じる雪暮夜入谷畦道、染五郎は、若手の中で、数少ない美形なので、直次郎はニンにピタリだ。河竹黙阿弥の作品で、役者たちが、これまで練り上げた、細かな演出が見事だ。そばを食べる所も、最初役人の二人が、雑にそばを食べているシーンを見せ、直次郎が蕎麦を、少しずつ口に入れ、咬まずに飲み込むように食べると、いきに見えるように工夫したり、三千歳に手紙を書く時に、筆先が取れてしまったら、着物にさしておいた、ヨウジの頭を歯で咬んで、筆代わりに使うところも、芸が細かい。上方のじゃらじゃらした色模様より、江戸っ子のきっぷのいい、直情的な、情事の結末の方が、江戸っ子としては、気持ちがいい。三千歳は、芝雀。

鈴木桂一郎アナウンス事務所

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