歌舞伎イヤホンガイド解説員の抱負

実は、5年前に行われたイヤホンガイドのオーディションに応募して、三次予選まで行ったが、最終的には、落とされてしまった経験がある。今回、二度目の挑戦で、オーディションに合格して、嬉しく思っている。前回落選した時、何故駄目だったのか反省したが、歌舞伎を自分の思いだけで楽しんでいて、400年の歌舞伎の歴史の中で、どう、人々が歌舞伎を楽しんできたか、その歴史を忘れていたことに気が付いたのだ。明治以降でも、歌舞伎評論の先達が、歌舞伎のどこを見て、素晴らしいと思ったのかを著書に表しているが、まずこうした書籍を読むことで、普遍的な歌舞伎の面白さを確認し、そこに自分の視点を重ねて歌舞伎を観るように、見方そのものを変えたことが大きかったと思う。義太夫も、書物で予め読んで、何を語っているのか調べた上で、歌舞伎を観る事にした。更に、観る度に、自分なりの歌舞伎評論をまとめる作業を、ここ数年行ってきた。こうした歌舞伎の見方の変化が、今回の優秀賞に繋がったのではないかと、私は理解している。

これからの歌舞伎見物は、自分の楽しみのためだけに存在するのではなく、どう歌舞伎の面白さを、初心者からベテランまで伝えうるのかを考えて観ないといけなくなった。書物での研鑽も、今まで以上に積まないといけない。責任重大である。68歳からの新しい仕事として、最大限の努力を払おうと思っている。

歌舞伎には、江戸時代に、タイムマシーンに乗って旅行する楽しさがあると、私は思っている。時代物の歌舞伎にも、見つめる視点は江戸時代にある。歌舞伎を通して、江戸時代の案内役を是非果たしたい。憧れの江戸時代に、私と一諸に、タイムスリップしましょう。

鈴木桂一郎アナウンス事務所

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