1月31日(金) 「BS句会令和2年1月」

令和2年の初のBS句会に出た。先生は岸本尚毅先生。提出句は、寒卵啜りウィルスのニュース聞く、鉄アレイ握れば熱し冬のジム、敷松葉松ぼっくりの一つ寝て、向けようとすれど我れ見ぬ水仙花、初場所や德の字一つ覚えけり、

鉄アレイ握れば熱し冬のジム     あられ並選、岸本先生特選

寒々としたジムの中、鉄アレイ、ダンベルも冷え冷えとして冷たい。でも時には、冷たいと思って握った鉄アレイが、誰かがトレーニングした後で、ぬくもっている時もある、私の直前にこの鉄アレイを使ってトレーニングした人がいる。そんな時は、私も負けずに頑張ろうと思うのだ。冬場は特に冷たい鉄アレイやダンベルだが、握った際には冷たく感じるが、すぐに鉄が暖かくなるから不思議だ。掌のぬくもりで温められるのだが、トレーニングを頑張ろうと言う、気迫が一層鉄を熱くするのかもしれない。

寒卵啜りウィルスのニュース聴く            岸本先生並選

ウィルスの培養に、卵が使われると、昔聴いたことがある。中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスが拡大して、災いを避けて、日本人がチャーター機で次々に帰国している。第二便では210人の方が帰国者したが、うち26人が発熱して、入院した。ニュースを聴く度に、武漢の死者が増えていき、今後の推移は、予断できない。自分は絶対に新型ウイルスには掛からない、そんな決意を込めて、寒卵を啜るのである。

敷松葉松ぼっくりの一つ寝て

今月13日、成人の日、広尾の祥雲寺での初釜に出席した。祥雲寺は臨済宗大徳寺派のお寺で、筑前福岡藩黒田氏の菩提寺で、境内には、黒田長政の墓がある。創建は元和9年、1623年だから、相当歴史のある寺だ。このお寺の庭は、広尾とは思えないほど、閑静で、庭は手入れが行き届いているのだが、各所に敷松葉が敷かれていて美しかった。多分、庭の苔を、寒さから守ろうという意図があると思うが、寒さへの防御を超えて、庭のアクセントとしての美しさをたたえていた。少し赤みがかかった松葉が広い面積に敷かれていたが、綺麗に掃除がされて、茶室周りを彩っている。厚みのある松葉の布団のようにも見えたのだが、そこに一個の松ぼっくりが落ちていて、まるで暖かい布団の上で寝ているように見えた。

向けようとすれど我れ見ぬ水仙花

水仙は、英語でナルシスと言い、ナルキッソスと言う美少年が、水に映る自分のあまりの美しさに見とれて、水に落ちて死んでしまったと言う話しが残っている。水仙は、香りが強く、首が長く、花が少しうつむき加減で咲いている。花瓶に生けても、なかなか思うような方向に向いてくれない。見る側を意識せず、あくまで水仙は、美しい自分の姿を、水面に映る位置で見ているのだ。

初場所や德の字一つ覚えけり

令和二年の初場所は、幕尻の德勝龍が14勝1敗で初優勝した。インタビューでも、「優勝は意識していませんでした」、と言った後、すぐに「嘘です。めちゃくちゃ意識してました」、と笑わせた。小林アナウンサーの聞き方のうまさがあって、奈良出身の愛嬌のあるキャラクターが引き出され、私の中に德勝龍と言う関取が完全に固定された。正直言って、初場所は始まった時まで、德勝龍と言う名の関取がいる事を知らなかったし、もちろん顔も知らなかったのだが、今回の初優勝で、完全に名前と顔を覚えさせられた。四股名の德勝龍の德と言う字は、普通の徳の字ではなく、四の下に、横に一本一の字が書かれているのを発見し、こんな漢字があったことにも、驚いたのである。

鈴木桂一郎アナウンス事務所

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