2017年12月10日(日)『12月歌舞伎座2部。らくだ、蘭平物狂』


 第二部は、らくだ、と蘭平物狂。

らくだは、何回も見たが、大阪の言葉でのラクダは、初めて見た。最高に面白かった。腹を抱えて笑った。歌舞伎でこんなに笑ったのは、初めてだ。

これまでは江戸弁でしか見た事がなかったが、上方落語を歌舞伎に移した新作歌舞伎なので、考えようによっては、大阪弁の方がいいのかもしれない。ただ出演者の大阪弁が、下手だと、耳障りになって劇の中にスパッと入っていけないが、今回、出演者の大阪弁は、全く気にかからなかった。

落語が大本だから、くだらないのは当たり前なのだが、江戸弁だと、クダラナサの中に、人情とかペーソスも感じるが、大阪弁で、ラクダを演じると、とことんくだらなく、本当に可笑しくて、笑いっぱなしだった。でも、歌舞伎の味は、まるでない。松竹新喜劇か、吉本のお笑い劇場である。

美形の愛之助がヤクザに扮し、悪役メイクを施し、怒鳴りまくるのは、凄味があって結構。オネエっぽい役が、テレビ番組で当たり役になった中で、多少コミカルな、違う顔を見せられたので、役が拡がるのではないかと思った。

中車の紙屑屋は、歌舞伎に入って、数年、ほとんどの舞台を見ている中で、一番の当たり役と思った。紙屑屋の久六は、凶暴な熊五郎を恐れる小心者で、猜疑心は強いが、生真面目で、単純で、お人よし。ついには断り切れず、死人を担ぐ。断り切れず、言うとおりにしてしまう滑稽さをうまく演じていた

死人にかんかん踊りをさせるくだりは面白いが、それだけのこと。でも亀蔵の死人役が死人らしく、脱力した雰囲気を出して、うまくかんかん踊りをしていていて、終始楽しめる。そんな久六が、後半酒を呑み、酔いが回ると、前半とはガラッと変わり、大きな声で、強気に出て、熊五郎と立場が逆になるという趣向だが、酒を呑むと、性格が変わる人間は、現代にも大勢いるので、笑えた。貧乏人が、呑み慣れぬ酒を呑みすぎ、態度まで、でかくなる演技には、笑った。この人の魚屋宗五郎も、何時かは見たいものだ。

らくだ、勘三郎は、もっとリラックスして、楽しんで演じていたが、まだ愛之助には無理か。中車は、楽しんで芝居しているように見えた。昔見た松緑のラクダより、疲れず、楽しかった

蘭平物狂は、仕事の為、見ずに帰った。

鈴木桂一郎アナウンス事務所

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