2017年10月25日(水)『歌舞伎座10月昼の部、極付印度伝、マハーバーラタ戦記』

 歌舞伎座10月昼の部を観た。インド神話の叙事詩、「極付印度伝、マハーバーラタ戦記」、新作歌舞伎である。中国、韓国が舞台なら、まだ理解のうちだが、インドの神話なので、どんなものを見せてくれるのか、怖いもの見たさもあり、期待して見に行った。

舞台の幕が開くと、金色の背の高い屏風絵の前に、梵天、帝釈天、那覇延天、大黒天、多聞天が、それぞれ金ぴかの衣装を着た仏像風の5人が並んでいて、いきなり視覚的にぶっ飛んだ。ゴールドの衣装は、袴風の衣装だが、それぞれが、微妙に異なっていて、デザイナーのセンスの素晴らしさに打たれた。まばゆいばかり太陽神、シバ神、が、それぞれ花道、仮花道に登場すると、歌舞伎座の舞台は、ワイドに黄金色に輝く。歌舞伎座の舞台が、こんなに金色が輝いた事は、前代未聞だ。

舞台上では、インドの神々が、人の世界は、争いが絶えず、神々は、争って人間がいなくなるのも仕方がない等と話していたが、なんとか戦いのない平和な世界にしたいと、太陽神が、和で持って世界を収めようと迦楼良を派遣し、帝釈天は、力で世界を収めようと、阿龍樹雷を送る事が決まった。地球に送られたこの二人は、決局、違う国に所属して戦う事になる。和で世界を治めようとした釈迦楼良が、なぜ戦うのか分からない。さらに戦う理由に、義理がでてくるのも疑問だった。義理のためなら戦うことが必要なのか、頭が混乱した。この戦いで、 迦楼良は、阿龍樹雷と戦い、自刃して果てる。世を平和にするために、なぜ自刃して果てるのか、さっぱり分からなかった。

ビジュアル面では、ゴールドが強調されて、視覚的に楽しめたが、なにせインドを舞台にした神々のドラマのなので、珍しさはあるが、ぴんとこない。役者の見せ場、ドラマの山場が、よく分からないまま推移していく。場面場面では、大きな拍手が沸くが、そんなに大きな拍手が起こる場面なのかと、観客の中で、自分が取り残されていく感じがした。決局衣装は派手だが、この作品は、何を言いたいのかよく分からない舞台だった。

一見スーパー歌舞伎風ではあるが、テーマがはっきりせず、テンポは遅く、チャンバラシーンも、出てくるが、中国雑技団が、飛んだり跳ねたりする訳でもなく、火災シーンは炎の幕だけで終わり、取り立て凄いと言うほどの事はなく、結局、金色の衣装ばかりが目立つ芝居だった。

鈴木桂一郎アナウンス事務所

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