令和3年7月15日(木) 『歌舞伎座7月、1部、按摩と泥棒、蜘蛛の絲宿直噺』

歌舞伎座7月歌舞伎は、按摩と泥棒、蜘蛛の絲宿直噺の二本。

按摩と泥棒は、かつて人気のラジオドラマだそうだ。按摩を中車、泥棒を松緑が演じた。中車は、下品で金に汚く、表裏がある按摩の日常生活をリアルに演じていた。社会のメインに躍り出る事が出来ない按摩なれども、江戸社会は、盲人が何とか生きられるように、按摩の仕事を盲人に独占的にできるようにしたり、金貸しをする事を認めて、盲人が生活できるように配慮した。その許容された社会の中で、社会の底辺で、したたかに生きる、按摩を活写していて、楽しく見た。泥棒の松緑は、いい人過ぎて、これでは、最初から按摩に丸め込まれる事が、予想がついてしまう。松緑は、ほのぼのとして、悪人には程遠く、コミカルな演技が楽しい。荒事に加えて、喜劇は、松緑の生きる道だと思った。

蜘蛛の絲宿直噺は猿之助の六変化が楽しみな舞台で、昨年11月の再演である。女童、小姓、番頭新造、太鼓持ち、傾城、女郎蜘蛛の精の六変化を早替わりで務めた。見た目の変化中心の早替わりなので、変化そのものの早さが楽しみ。猿之助は、衣装、鬘、メイクを多少変えるだけで、まるで別人になる。人格も変わるのだ。とくに、傾城姿になり、目つきの変化で、蜘蛛の精の変化だと思わせる眼力が凄いと思った。来月の加賀見山再岩藤の、六変化が、今から楽しみだ。