6月7日(金)『六月大歌舞伎昼の部、石切梶原、封印切』
寿式三番叟、女車引は観ず、石切梶原、封印切を見る。
梶原平三誉石切は、吉右衛門の当たり芸。吉右衛門は、出からして若干白く塗った顔が颯爽としていて素敵だった。刀の目利きであり、相当の剣の達人である梶原平三、持ち込まれた剣を見つめる目の鋭さと、名刀と判断し、惚れ惚れとする素晴らしさの表現、白鞘に手掛かりを巻いて行く手練れさ、まさに余裕綽綽ろしていて立派な平三で、テンポよく話が進み、飽きさせなかった。最後に、手水の石を斬って、名刀と言わせるのだが、切れっこないと思っていても、切れる楽しさを味わえた。最近、手水の石を斬ると、笑いが起きるが、今日は少ししか笑いが起きず、良かった。
仁左衛門の封印切は、何度見ても最初の上方和事のジャラジャラとした芸が楽しい。封印切は、悲劇が待っているので、色男でないと、悲劇性が薄まる、この点仁左衛門にはぴたりと合った芝居だと思う。八右衛門に侮辱されかっとなった忠兵衛が、自分の金ではないのに、封印を切らなければならない所に追い込まれ、最後封印を切ったら死罪になると分かっているのに、男の意地で、封印を切ってしまう男の心情が描かれていて、心を打つ。愛之助の八右衛門は憎らしくていい。でもよく考えれば、忠兵衛には、遊女梅川を身請けできる金は用意出来るはずもなく、決局は、自爆する訳だから、恋に身を誤った男の悲劇でもある。最初に好きな人に身請けされ喜んだ梅川だが、忠兵衛と、心中しなければならなくなり可哀想に思った。
0コメント