平成30年4月6日(金)『BS句会4月』
4月6日(金)『BS句会、五句提出したが、全滅。うーん悲しい』
月に一度、渋谷のニュージープラットフォーム行われるBS句会に出席した。櫂未知子さんが、撰者を担当してくださった。いつもの様に、5句を提出したのだが、一句も選ばれなかった。才能がもともとないのではあるが、残念である。以下提出句に解説を加えた。
ヘッドギア付けて老犬春眠す
淫乱の苗我にあり炎立つ
花の名をなべて忘るる桜かな
女一世の契り花は葉に
さんや団子のかおり芝桜
もう十数年通っている美容室で飼われているブルドッグは、お店のマスコット的存在で、客が来ると、挨拶代わりに寄って来て、時には脚を舐めたりして、愛嬌を振りまいていた。
その犬が、老いて来て、最初は、よろよろと歩くようになり、そのうちに、食事を吐いたり、おしっこや、便をたれ流したり、老化が進んでいる。先日、美容室に行ったら、犬がヘルメットを被っていた。犬用のヘッドギアと言うそうだ。バイク用の頭をすっぽりと覆うヘルメットとは違い、犬の頭の部分に、ソフトな素材を使い、鉢巻きのように被せ、目の辺りには、透明なシールドがついていて、前が見えるようになっている。どうしたのと聞いたら、愛犬が、ふらふら歩きながら、次第に壁に頭をぶつけるようになったので、頭を保護するために、ヘッドギアを購入したということだった。ヘッドギアをつけたまま、幸せそうに、春の午後、すやすやと寝ていた。
淫乱の苗我にあり炎立つ
春になると、身体に、エネルギーが満ちて、若い人なら性欲が満ちて来るだろう。能力的な差、個体差はあるが、性欲は灰になるまでと言われているから、中高年でも同じ事が言えると思う。結婚前なら、誰とセックスしようと、問題はなく、結婚すると、一夫一婦制という法律の縛りがあるからままならないが、性欲のおもむくまま、淫乱にセックスを楽しみたいと言う願望を持つ人は、少数派ではないと思う。炎立つ淫乱の種我にあり。
誰でも、身体の奥底に、淫乱の種を持っている。理性、常識、法律で固められているから、本能のおもむくままには行動できないが、こうしたいと言う願望は、小説や映画、AVに満ちている。その種が芽吹き、稲で言えば、苗となり、体の中に、密かに成長し、炎となって燃えてくるのだ。
淫乱の苗と言う表現が、中途半端で、淫乱の種と表現した方が良かったかもしれない。炎立つは、炎が燃え盛る様、炎の様な激しい感情が、非常に激しさを増している状態をいう言葉であるが、NHKの大河ドラマのタイトルで、どうしても、そちらに引っ張られてしまう。
俳句の中に使うと、唐突感が否めないかもしれない。
花の名をなべて忘るる桜かな
桜は誰でも知っている花である。2歳の子供も、桜を見れば桜だと言う。私は、咲いた 咲いた 桜が咲いた と教科書で教わった。人生で初めて覚えた花の名前である。
花好きや、俳句を作っている方なら、花の名前を、何百種類も知っていると思う。それぞれ好みの花もあるだろうし、季節季節の花を部屋に飾って楽しんでいる人も多いと思う。
でも桜が咲き始めたら、心がそわそわしてきて、他の花への関心が急速に薄れ、桜以外の花の名前なんて、不思議に、どうでもよくなってくる。桜の季節は、他の花は、眼中になくなる、いや敢えて忘れようとしているのかもしれない。この句は、当初は、現代語表現で、花の名をすべて忘れる桜かな、と句を作った。古めかしい言葉でモデルチェンジしたが、素直さに欠けたと反省している。櫂未知子先生は、「今日の句会では、桜の句がいくつも出たけれど、桜は強烈な花なので、盛りを過ぎて、花が散ってしまった今、桜を読んでも、遅れすぎて選できない」と言われた。成程、おっしゃる通りだと思う。強烈な季語は、遅出しでは、駄目なようだ。
酒女一世の契り花は葉に
花は葉に、で一句作る事になったので、急遽作った俳句。花は葉に、と言う言葉を使い、取り合わせで作るのが王道だろう。花は葉に、とまったく関係のない、五、七を持ってくるということだ。パズルのようでなかなか難しい。少し浪花節的な日本語で戦おうと思い、作ったが、まるで演歌で、実際に何を言いたいか分からず、選ぶ方も困った事だろう。
寅さんや団子のかおり芝桜
句会の兼題は、芝桜だった。柴桜は、ポツンと咲いているよりは、群生している景色を思い浮かべるだろう。山や高原、海辺、広大な面積を柴桜が埋めている光景は、よく見る景色だ。私は、柴又の帝釈天がある荒川べりの芝桜を思い浮かべた。すぐに、葛飾柴又を舞台にした、男はつらいよ、にイメージが拡がり、寅さんと団子を思い浮かべた。寅さんが、帝釈天の参道でもとめたお団子を、芝桜の上に座り、おいしく食べる様子を句にしたが、余りに具体的に読み過ぎて、景色が固定されて、イメージが拡がらなかった。寅さんの妹は、さくら、という名前だが、洒落にならなかった。
BS句会の為に、作った未提出の俳句をまとめた。
仲見世に煎餅の香(こう)春麗
鬱と薔薇〇と×と書き春の宵
春愁や心の病秋までも
ホスピスの庭で花見の宴かな
春嵐まぐわう木々の喜悦かな
筋肉の鎧さらして春のジム
春愁を置き去りにして温泉へ
あの国の言葉も聞こえ箱根号
母の紅さして忘れし夏の刻
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