令和3年12月9日(木)「歌舞伎座1部、猿之助の新版伊達の十役」

歌舞伎座の一部、新版伊達の十役を見る。終演後、周りの人は、面白かったねと、言い合って居た。先代猿之助で2回、海老蔵、幸四郎でも見たが、20年以上前に見た、先代猿之助の舞台が蘇ってきて、わくわくしながら見た。猿之助と、幸四郎、海老蔵との一番の違いは、何か、それは、一に役者が舞台を面白くしようとする熱意である。幸四郎、海老蔵も熱演だったが、役者の自分を観ろと言う熱意は感じたが、猿之助は、俺の演技、早替わりを見ろという点でも二人以上だし、更に俺がプロデュースしている舞台は、凄いぞ、と言う役者、プロデューサーの熱意の違いである。

伊達騒動を扱った芝居を、何度も見たが、名場面を早替りありで繋げて行く、楽しい舞台だ。序幕で、奥殿の場がでて、次に床下の場である、奥殿の場は、飯炊きを省いて、省略形の舞台、猿之助の正岡は、目つきが素晴らしい。もちろん鶴千代を外敵から守ろうとする注意力、警戒のための目くばせが、行き届いていて、本気で鶴千代を守ろうとしているように見えた。更に猿之助の正岡は、単なる忠義物として生真面目な正岡ではなく、したたかに敵の出方を伺い、相手を騙すしたたかな目であり、演技であった。わが子鶴松が、八汐に短刀で刺され、うーん、とうめき声を出すのだが、何度も首をさしても、正岡の表情に変化はなく、鶴千代を衣装に隠して、平然とした表情を続ける。時折、袖で顔を隠し、うつむきながら悲しさを出す演技の細かさがある。この演技で、栄御前が、正岡を味方と思い込んでしまう事が納得した。

床下の場は、荒獅子男乃助の替わりに、松ケ枝節之助が出て来て、猿之助が演じ、その後,仁木弾正を演じたが、不気味な表情を浮かべる口元に力があった。

大詰めは、全くの新作で、獨道中五十三駅から連想した間書東路不器用(ちゅっとがきあずまのふつつか)猿之助が、8役早替わりで、楽しませてくれた。

鈴木桂一郎アナウンス事務所

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